不思議の国からこんばんわ
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 

由緒正しいお屋敷町の丘の上に
順序をただせば そちらこそが先住者である、伝統ゆかしき女学園があって。
大人の手前、でもまだまだ初々しくも清純で、
何かと未成熟なところも多かりしという、
十代後半の多感なお嬢様がたが寄り集い。
翠の多い広大な庭園に囲まれた、少し古風な学舎の中、
時には無垢であるがゆえの煩悶を抱えもしつつ、
それは伸び伸びと健やかに過ごしておいでの、
基本、朗らかな女子高であり。
その歴史が長いせいもあってか、
旧家や名士のお嬢様も多数通っており。
要人クラスの子女であれば、
それなりの警護や警戒の心得も行き届いているかもしれぬが、
さほど一般へは露出も少ないものの、
世が世であれば当地の元藩主とか、
人間国宝級の血統のご一家とかいう“天上級”ともなれば。
冗談抜きの温室育ち、
よく言って…世間知らずで、浮世離れしていて無防備な、
無礼を承知で言えば、疑うことを知らない、隙だらけなご令嬢たちが、
何の苦もなく選り取り見取り…という解釈をされかねぬよな、
失敬千万な見方、世間様から されてなくもないのだそうで。

 「……。」
 「確かに失敬千万ですね。」

世間知らずなのはしょうがないじゃない。
親御様や周囲の人たちが、可憐なヲトメらに怖い想いをさせぬよに、
それはしっかと堅固に守っているからだし。
だからこその、あの清楚で儚くて、
たまに悩んだりしながらも、
大丈夫、頑張りますと
愛くるしい笑顔を見せてくれたりするんじゃないですか、と。
自分たちだって立派に そんな…清楚で儚くて可憐なヲトメの側だろに、
花園の番人側へと勝手に立候補し、

 「いろいろ懲りずに寄って来るバカが後を絶たないのは、
  向こうが学習しない阿呆だってことにならないんでしょうか。」

少なくとも自分たちが在学している今リーグは、
表向き何事も起こらぬ平穏無事な状態で通っているものの。
実は実は、水面下では結構な騒ぎも ひのふのみぃと生じてたりし。
学園をどっかのアイドル集団と勘違いしてか、熱狂的な隠れファンがいて、
ストーカーの一歩手前レベル、登下校や学外行事の姿を追って来るよな層があるそうで。
そういった連中をカモにしてか、
女学園由来の物品を盗み出したり、理不尽な因縁つけての恐喝紛いで入手したりし、
高価で売買するけしからん輩があったり。
そうかと思えば 学園内の由緒ある物品を狙っての
恣意的な魔手を伸ばしてくる輩が現れたりと、
悪党の接近は枚挙の暇もなく。
どれほど狙われまくりな女学園であることかと憤慨するひなげしさんなのへ、

 「まあ、それは…ねぇ?」
 「???」

言葉を濁した白百合さんだったのは、

 “叩きのめした輩やその周辺としては、
  たとえ、表向きお説教で済んだ程度の結果となっても、
  恥の上塗りとなろうから、他所へ話を広めなかろうし。”

彼女らと同世代のやんちゃ筋としては、
女子高生にひっぱたかれて畳まれましたと あちこちに知られたくはなかろうし。
ちょいと大掛かりな騒動で畳んだ相手は、
まだ公判中だったり収監中だったりする身な以上、
悪事を手掛けておりましたという付帯証拠になりかねぬのに、
誰彼構わず “あすこのお転婆には気をつけろ”と注意勧告してやる義理もなかろうし。
情報がそこで止まってしまっては、性懲りもない連中へ学習せんかと求めるのも無理な話。

 「隠密行動ってのは抑止効果を望めないのよねぇ。」

だから、ぐうの音も出ないよう余すところなく公開してただすため、
公明正大なルールとか法律とかがあるんだねぇ、なんて。
何かこう、話の順番がおかしくないか?と、
保護者の皆様から“おいおいおい”と、
ちょっと待てなんて窘められそうな小理屈を
持ち出してしまう、三華様がただったりするのだが。

 「???」
 「あ、久蔵殿、本気で分かってないぞ。」
 「そこが可愛いんですよぉ。」

肩先までのふわっふわのエアリーな金髪が乱れぬよう、
シルクのスカーフをちょっぴり撚ってから
鉢当てみたいに額へ当てて巻いてやる、七郎次の手際の良さへ、

 「♪♪」
 「あ、なんかすごく判りやすいぞ、その笑顔。」

こちらは自分で、魔女っ娘みたいなチュチュもどきの衣装を着つけつつ、
ヒサコ様こと久蔵の、含羞みの滲んだお顔をややからかうように覗き込む。

 「…。」
 「違うってよ、ヘイさん。
  今のはアタシの手が当たって耳がくすぐったかったんですって。」
 「…相変わらずの以心伝心ですねぇ。」

猫脚も優美なアンティーク調のスツールに腰かけ、
大人しくしている久蔵の支度に手を掛けている七郎次も、
実はいつもと違ういでたちに仮装中。
というのも、毎度おなじみ、彼女らの通う女学園の学園祭がいよいよ幕を開ける。
今年は祭日の並びの関係から、11月1日始まりとなり、
ならばと前日にハロウィンも兼ねた前夜祭が特別に催され。
設営が仕上がったクチから、執行部が常駐している生徒会館へ集まって。
準備完了しましたの報告がてら、
ハッピーハロウィンと声を掛け合い、
差し入れのお菓子を渡し合ったりするのが恒例。
中には間に合わなくてのこと、
夜明かしになるクラスや部活、グループなりも出ようから、
彼女らもギリギリまでは待ってる構え。
そこでの賑やかしにと、
余裕で支度を終えたクチがハロウィンの仮装でねぎらうこともあるようで。

 「今年は日程がまたちょうどいい。」
 「そうでげすねぇvv」

機嫌がいいというか、ノリノリだからか、
七郎次が幇間言葉で応じたそのまま、
大振り袖に袴という古風な格好で仁王立ちになり、

 「では、参りましょうか。」

あとのお仲間二人へ声を掛けての、向かった先はといやぁ……。

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